2009年10月12日月曜日

ロウきゅーぶ!1-3巻

ロウきゅーぶ!は去年の電撃小説大賞で入賞した、新人作家のラノベです。結構好評らしい?

内容は、小学生女子のバスケットボール部の臨時顧問として、高校生男子の主人公が小学生女子5人に囲まれる話であり、いわゆるロリな人向けのくだらない話として認識してもらえばまず間違いありません。

……しかし、この作家さんも「好きなラノベ」に秋山瑞人が書いた『イリヤの空、UFOの夏』を挙げているらしく、もうそれだけで応援したくなる。いや、小学生とかは関係ありません。


で、内容はラブコメともいいがたい救いのない内容かと思えば、これが普通に面白い。
スポーツもののラノベというものを、おそらくこれまでに読んだことはありませんでした。知る限りでは「銀盤カレイドスコープ」でフィギュアスケートやってた気がしますが、読んではいない。だから比較対象とかも私の中にはないんですが…

内容は、普通に「バスケ物」の小説だと思っても問題ない良い出来の作品でした。ただ、女子である必要はなかったとしても、やっぱり「小学生」でなければ成り立たない話ではあったでしょう。

以下、1巻の説明。

まず、設立されたばかりの女子バスケ部は男子バスケ部とコートの取り合いになっていることから仲があまりよくなく、しかも男子バスケ部は前回の大会で地区大会に優勝した、活動がとても活発な部活になります。
対して、設立されたばかりで、急に集めたばかりの素人集団な女子バスケ部には実績もなく、現在の練習風景を見ても「バスケットボールに親しむため」な目的によるボール遊びしかしていないような状況です。

地区大会で優勝後、県大会初戦で嘘のようにボロ負けした男子バスケ部はさらなる飛躍を目指し、部員一同厳しい練習をこなすことも辞さない気分でいたところに、女子バスケ部が設立され練習時間が半分になってしまったのです。

そんなわけで、「新設部が地区大会優勝チームに勝たないと廃部」という漫画でよくある展開になります。スポ魂です。そう、このラノベのジャンルは「ローリングスポコメディ」です。
ロウきゅーぶも篭球(ろうきゅう)であり、つまりはバスケのことです。ロリキューブではありません。


普通にやっても勝てなそうではありますが、勝負は小学生同士です。中学生の地区大会優勝チームだったりすると、結構な実力差が生じてしまうとも思いますが、小学生同士ならズブの素人集団でもなんとかならないこともない可能性がないわけじゃないことは否定できない。

チームの構成としては、部活設立のきっかけにもなった、エースプレーヤーが1人。前の学校にあったバスケ部にて、バスケの経験があります。男子バスケ部と勝負しても、1対1では誰にも負けません。かなり上手い。

他は全員素人ですが、一人、高校生並に背が高い子もいます。しかしこの子は、背は高いものの引っ込み思案な性格で、しかも背が高いことにコンプレックスがあるため、背が高いことを指摘されたり、それを利用するポジションにつくことを嫌がります。
他は運動神経並以上が2人、もう一人は運動能力低、身長も並以下。ただし非常にかわいい子で、相手チームにもこの子を好きなやつがいたりする。一種のエースキラー

そんな構成で仮にも地区大会優勝チームとの勝負となります。練習期間は2週間。試合時間はミニバスの前半後半10分ずつをさらに短くした前後半5分ずつ、5ファウルによる退場、選手交代などはなし。これは女子バスケ部がまだ5人しかいないことによる不公平を出さないための工夫で、5ファイルを出した場合、それ以降はファウルごとに1本のフリースローが約束されています。

この短い試合時間も、まだスタミナが足りない女子チームに有利ともいえる内容であり、このへんは勝負を受けた際に女子バスケ部顧問である、主人公の叔母(23歳くらい。外見年齢高校生並(本文より。イラストを見ただけでは、正直小学生陣と見分けがつかない))が女子バスケ部に有利なルールになるよういくつが提案してあったそうです。

そうして、試合もちゃんと描かれていますが、これがとても面白い。

まず、チームの実力差もしっかりあることながら、コーチである主人公は中学で弱小バスケ部を県大会準優勝にまで鍛え上げた、知将とも呼ばれるガードプレーヤーです。高校生バスケ部のほうは……実は「部長が小学生女子と駆け落ちしようとしたことによる、「不祥事による休部処分」」を受けたため、現在活動していないのですが。また、この部長というのも主人公がかつてコテンパンにのされ、目標とし続けたガードプレーヤーであり、強豪校からのスカウトもあった主人公が、さしてバスケ部の強くないこの高校へ進学した理由のひとつでもあった人物でもありました。退学になってしまったらしいですが、結局一度も出てこないのかな?この(元)部長さん。

で、試合のほうですが、主人公が授けたいくつもの作戦により、実際に「地区大会優勝チームくらいの錬度のチームにも勝てる」という可能性が十分に見込まれるまでの展開になります。

試合展開や、女子チームの能力は、さほどご都合主義というほどのものではありません。

試合展開も、どちらかといえば主人公が想定している内容の中ではあまり望ましくない展開でしかありません。「あわよくば」くらいの期待を持っていた要素もいくつかあったものの、それらは全く実現されず、結局、過度な運や相手の失策などはない、相手も常に最善を尽くし続ける中での勝負になってました。

女子チームの能力も、1人の経験者以外はきわめてお粗末なものでしかなく、花道並の成長を見せることもありません。

主人公が本文中「小学生最高じゃん」と漏らす場面があるとおり、小学生(+素人)ならではの「吸収の速さ」を見せつけ、主人公の指導を十二分に身に着けた上での試合になりますが、練習期間はたった2週間。さしたる成長とは呼べず……それでもこの試合では十分に有効に作用しています。


バスケ作品ということで、ところどころスラムダンクを思い出す部分があります。

「あきらめたらそこでなんとやらだ」という主人公の心中のつぶやきとか。右斜め45度からのワンハンドシュートとか。

これはあれですね。シリーズラストであの場面を再現することへの布石ですね。

大好きです。こんどは嘘じゃないっす

スバルならきっと言ってくれる。たとえ相手が小学生でも。

秋山スレでの感想では、1巻にわずかにブロント語が混じっていたという指摘もあるものの、私は気づけませんでした。


続いて、2巻の簡単な説明。
2巻では、「クラス対抗球技大会」に女子バスケ部がバスケの競技に出場するものの、相手となる「別クラスのバスケ参加者」はほぼ男子バスケ部のメンバーであり、1巻で使い切った「奇策」は一切使えないという上での再戦となります。

戦力バランス上、そんなことになったら、1ヶ月くらいみっちり練習したところで、女子バスケ部は男子バスケ部に決して勝てないような能力の差が存在しているんですが、女子バスケ部設立の原因になった事件に関係している男子バスケ部員1名のみは同じクラスに所属しています。こいつが男子バスケ部代表といった感じで1巻でもたびたび登場していたのですが、こいつは男子バスケ部のエースでもあります。

つまり、この球技大会では「ほぼ男子バスケ部員で構成された相手チーム」はエース抜きであり、ともすれば「クラス対抗」の球技大会には男子バスケ部エースをこちらのチームのメンバーとして出場させる事だって可能になります。
しかし、このエースプレーヤーはちょっと女子バスケ部メンバーといろいろ確執があって……という部分もあり、仮にチームに入る場合5人の女子バスケ部部員の誰が控えになるのか…というのも悩みの種になります。


そして今月、3巻が出たのですが、今回は主人公の幼なじみとその元チームメイト3人との5対3の試合でした。

……と、書くとちょっとネタバレになるわけですが、ついに主人公が関わっているバスケチームが小学生女子であることが幼なじみの女の子にバレます。

「あんた、なんでこの時期に小学生なのよ!」

と突っ込まれるとおり、基本的に主人公らは「部長のロリ疑惑で部をつぶれた奴ら」であり、世間的に見てあまりにマズいだろう?ということになる様子です。

このような周囲の対応は1巻でもちょっと触れられており、主人公の叔母も、

「最近は世間の子供への対応にいろいろ出てきてるから、たいていの大人は近づかないようにする。特に女の子には。こんな環境だとね、まっすぐ育たないんだよ。それはある意味かわいそうなことなんだ。私は見逃せない。この手でまっすぐに伸ばしてあげたい」
(本文ママ……ではなくうろ覚え)
と、元々は小学生の指導に乗り気ではなかった主人公を説得しようとしていました。

作者インタビューでも、
http://news.dengeki.com/elem/000/000/139/139129/

>――『ベイビー・プリンセス』ですか。ちなみに好きなキャラクターは?
>蒼山先生:2番目です。
>――青空(そら:1才)ですか?
>蒼山先生:ごめんなさい。上からです。
>――霙(みぞれ:17才)ですか。
蒼山先生:そうですね。
――ちなみに僕はあさひ(0才)が好きです。
蒼山先生:かわいいですよね。変な意味ではなく。
――そうですよね。変な意味ではなく。ちなみに『苺ましまろ』とかどうですか?


―――というような会話がなされています。寒い時代になったものです。


本文中に一切イラストはなかったですが、幼なじみのチームメイトは2人とも水着でバスケに参加しています。途中で忘れてましたが。
人気はあるようなんですが、アニメ化されるでしょうか。いろいろ難しそうにも思えます。
この設定も、アニメ化されるなら生かされるのかもしれません。

杉井光の『さくらファミリア!』にて、2巻のテーマとして「聖霊とは何か」というものがありました。
聖霊というのは三位一体の1つであるらしく、正しく知っている人が少ない部分ということもあって長い説明が入るんですが、この場面でその説明を行うガブリエル(大天使)が無駄にビキニの水着になっていました。イラストもないため全く無駄です。
文中では
「ここは私が水着にでもならないと、こんな無駄な説明誰も読まないでしょ?」とか
「…そんなわけで、教会の偉い人の間でも、聖霊に対する解釈が真っ二つに分かれちゃったの。わたしのこのおっぱいみたいに」

などと無理に関連付けたりしていたのですが……
あと、この「聖お兄さん」よりもはるかに危険なキリスト教もの(そんなジャンルあるか?)の作品は、3巻で終わりなのでしょうか?続きも期待しています。少々、ネタ切れ気味かもしれませんが

結構マイナーなネタで攻めてきているため、誰でも知っているようなネタでは書く気がしないのかもしれません。
でもまだ聖人も何人も残ってますし。
世界最古のヤンデレとして名高いヨハネの嫁(ヘロデの娘)とかも登場してほしい。
ちなみに、世界最古のツンデレはこれまた世界最古の文学作品である「ギルガメッシュ叙事詩」に登場するイシュタル(女神)でしょうか。


最後に、3巻で主人公が一度触れていた「今の彼女らはミニバス公式戦には出られない」という部分がちょっと気になりました。

ミニバスについて調べてみると、
ミニバスネット
http://www005.upp.so-net.ne.jp/minibasketball/index.html
連盟規約
http://www005.upp.so-net.ne.jp/minibasketball/03/3-1.htm
>第21条
>本連盟に加盟登録しようとするチームは毎年度、日本ミニバスケットボール連盟の加盟登録規定に基づき、所属の都道府県ミニバスケットボール連盟を経て、本連盟に登録しなければならない。
>第22条
>本連盟に加盟登録し、同時に(財)日本バスケットボール協会に登録していないものは、本連盟の主催する行事に参加することができない
>第23条
>年度の途中に追加登録を行う場合は、所属の都道府県ミニバスケットボー連盟の承認を得なければならない。
>第24条
>登録年度は、毎年4月1日より始まり、翌年3月31日をもって終る。


このへんでしょうか。
24条より、「年度」が4月1日より…となっている以上、4月1日からの登録が楽なんでしょう。23条を見ると、それ以外の時期でも不可能ではないっぽいですが。

しかし同時に(財)日本バスケットボール協会に登録らしいので、そちらも調べてみると
http://www.jabba-net.com/jabba/data/paper/data_tp_03.html
毎年3月末に名簿を作成
各都道府県の協会は毎年5月までに選手情報を本部に申請
などがありますが、問題は
(加盟・登録の変更)
第9条
1.(1)追加加盟:期日以降新しく結成されたチームは、都道府県協会がその事実を審査のうえ証明書、チーム加盟届書及び競技者登録届書とチーム加盟料・競技者登録料を添えて、協会に申請し、協会の承認を得て加盟・登録することができる。
(2)追加登録:従前一度も協会の加盟チームに登録されたことのない競技者については競技者登録届書に赤色を使用して所要事項を記入し、競技者登録料を添えて都道府県協会に提出し、前条2項の手続きを経て協会の承認を得るものとする。
2. 競技者の移籍があったときは、新所属チームは旧所属チームの同意書または資格審査委員会の許可書を添付して遅滞なく競技者登録変更届書を協会に提出しなければならない。

このあたりが重要になってきそうです。しかし、後々からの申請でもうけつけてくれてはいるようです。
経験者1名の「前のチームの了承」も取れるでしょう。部員とは確執があったようですが、チームの監督とかはちゃんと認めてくれるに違いない。名門の高校やらプロの世界なんかでは、「有力な選手を他チームで活躍させたくないから、可能な限り認めないでおく」とか、「最初から他校からのスパイとして所属していた可能性がある」みたいな理由で承認を拒否したりするケースもあるかもしれませんが、まあこれは小学生ですし。

他には問題はなさそうに思えます。
10年以上前にドッジ弾平を読んでいたころ、「スーパードッジ連盟は、チーム転属後1年の公式試合出場を原則認めていない」という説明を見たことがありました。そんな感じの規約の存在を想定していたんですが……

また、この申請は、「協会承認の日をもって有効」になるらしいですが、何か定例会議みたいなものを通すんでしょうか。ただ書類を受け取るだけで、申し込みから2,3日で承認されてもよさそうな気もします。
名簿みたいなものを作る以上、月に1度くらいじゃないと承認されないのかもしれません。
いずれ「無事承認されました」という通知が届いて、公式戦にも出場できるようになるのかな?
あと、もしエース(そしてメインヒロイン)の移籍に問題があったとすると、そのときは試合ギリギリのメンバーしかいない女バスは4人では出場できないのです。

……あれ?ひょっとして「控えにあと2人」とか必要だったりするのかな?もう一度調べる必要ありか。

0 件のコメント: