2009年7月24日金曜日

天空のアルカミレス&エンディミオン

天気

(覆された宝石)のやうな朝
何人か戸口にて誰かとさゝやく
それは神の生誕の日。


http://uraaozora.jpn.org/ponishiwaki1.html
西脇順三郎


三上延の「天空のアルカミレス」というラノベで引用されていました。
作者は「なんとなく」引用したといってるものの、最近になって、何か意味があったのでは?と思って調べたりしました。
この詩は、いきなり()で始まっているところも印象的であると紹介されることが多いようですが、
http://www.meijigakuin.ac.jp/~gengo/bulletin/pdf/19hosea.pdf
これによると、いきなり()で始まる書き方をしているのは、この人がもともと英語でこの詩を書いた可能性があるようです。

Weather

On a morning(like an upturn'd gem)
Someone whispers to somebody in the doorway.
This is the day a god is born.


結構納得がいきました。閉じかっこの位置は、「(覆された宝石のやうな)朝」のように、"~ような"の後になりそうな気もしますが。

図書館にて、この詩がはじめて収録された、『Ambarvalia』という詩集を探してみましたが、確かに、英語で書いた詩が出てきたりします。
英語と日本語で詩が書いてあり、それもどうやら一度英語で書き上げた詩を日本語に書き直しているような印象がありました。言い回し的に。

ついでに、(覆された宝石)の部分の引用元である、ジョン・キーツの「エンディミオン」という詩も読んでみました。
英語でならネットで手に入りますが、これを全部読むのは困難です。
そこで、これが載っている本を図書館で借りて読んでみました。
2回読んでみて、ようやく分かりかけたかな?といった感じです。

200ページもある詩なので、もう読みたくありません。 叙事詩かと思って読み始めましたが、200ページ続く抒情詩でした。ストーリーはあまりなく、全編に渡って世界の美しさを褒め称えている感じです。

なんとなく理解した範囲では、以下のようになっていました。


主人公のエンディミオンは寝ていることの多い青年で、彼には仲の良い(というか、ブラコンの)妹がいます。
妹は、久しぶりに起き出した兄の世話をしながら、「何故あなたは眠り続けるの?」とたずねます
兄は「それは、夢の中の世界のほうがすばらしいからさ」と答え、自分がいかにすばらしい世界を見てきたか妹に話して聞かせます
妹は泣きながら「現実を見て!」と兄を説得しようとしますが、「いいから聞きなさい、妹よ!」とさらに妄想を加速させていきます。

その後、夢の世界にも匹敵することに現実に出会ったという話をします。その話をする際にも、
「あれは現実だったのか、本当は夢だったんじゃないのか」
という断りを入れ、実際、話(すばらしい体験)への導入部分がどうも昼寝してるところとか「まどろむような心地の中」とかどうも夢っぽい。

しかし、彼は最終的に、"すばらしい体験"の中で出会った美女を連れて妹の前に現れ、妹の目の前で兄とその美女は消えていきます。
兄は、いつでもこの森に会いに来なさい」と言い残して去ったのですが、妹のほうも別に兄を心配するでもなく、驚くでもなく、ただ森を去っていきます。



…多分、こういう話でした。
分類上は抒情詩というよりも物語詩というらしい?物語そっちのけで風景を描写し続けたり、神を賛美したり、主人公が突然愛を叫びだしたりするので、物語としての展開が全く分からなかったです。

「覆された宝石」のシーンあたりは、比較的物語らしくなっていました。
スキュラの項目に、エンディミオンの記述が少しだけあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9
「グラウコスは、同じように溺死したかつての恋人たちの遺体を集めて千年を過ごしていれば、誰かが自分を救ってくれるかも知れないと考えた。そして千年後、アルテミス(もしくはセレネ)の加護を受けた眠れる若者、エンデュミオンがグラウコスに若き姿に再び与え、スキュラたち、溺死した人々を生き返らせてくれるのだという。」

という伝説をモデルにしたシーンのようです。詩の中では、「覆された宝石のような一瞬の輝き」とともに、グラウコスの若々しい肉体がよみがえりました。グラウコスを指して"新たに生まれた神"と表現している場面もありました。

英語では、
http://www.bartleby.com/126/34.html
>Out-sparkling sudden like an upturn’d gem
あたりでしょうか。

ダン・シモンズのハイペリオン4部作(文庫本で8冊)というSF小説がありますが、このジョン・キーツの詩「ハイペリオン」、「エンディミオン」をモチーフにして作ったものであるらしく、終盤ではジョン・キーツのクローンなども出てくるようです。
評判は結構いいらしいです。とは言っても、厚めの文庫本1冊分を前フリにつかっている感じらしいため、そこはなんとか堪えて読まなければならず、また、後半3,4冊は蛇足だという意見もあります。3,4冊っていうと、ハイペリオンが終わってエンディミオンに入ったあたりから全部ですか?


ちなみに、「涼宮ハルヒの憂鬱」にてこの本を長門有希が読んでいるシーンがあります。主人公に「公園に来るように」と書いたメモを挟んで渡した本というのはこのハイペリオンであるらしいとも言われています(キョンがあらすじを説明していた)。
このあたりは文中の描写から推測するしかない部分で、一種ファンの間での噂という側面もあるんですが、京都アニメーションが作ったアニメでも、このシーンで出てくる本の表紙は確かにハイペリオンっぽかったです。
アニメ作るときとか、こういう細かい部分は無視されてしまうことは結構多く、ファンの失望の声が聞こえてくることは結構多いものですが……さすが京アニ。

数年前に買って放置していたものの、再び読んでみようかな、と思い始めました。今読んでいるシーンは、ある登場人物の過去の回想です。

軍人である彼は、バーチャルリアリティを利用した戦闘シミュレーションの訓練を受けていました。
これは、歴史上の戦争を追体験する軍事訓練であると同時に、戦争の歴史の勉強にもなるという形で、中世の剣での戦争から火星で光線銃を用いての"近代的"な戦争まで様々な時代の戦争を経験しました。
これは、もし戦闘中に"太字死亡"したりしたら、体験している自分自身もどうなるかわからないという、まあ、よくある感じの設定なのですが、あるとき、彼は他の誰も見たことも聞いたこともないようなバグに遭遇します。

……で、何故かこの戦闘中に美しい女性に出会い、バーチャルリアリティにおいて本番をおっぱじめます。そんな機能まで付いてるとは…。戦闘シミュレーションには必要ないでしょう。

その後彼は、コンピュータ理論、戦争の歴史など、このシミュレーションに関わる学問についてより熱心に学ぶようになり、本文中では
「…つまり、彼はより勤勉な訓練兵となっていったのだ」
と説明されており、彼はその後、銀河にその名をとどろかす名将になる…らしいです。
しかし実際のところ、バーチャル空間に入ったとたん訓練そっちのけで例の女性を探し始めてるんですが。
時には味方兵、時には街の娘として彼女と出会い、そのたびにやりまくります。短い時間で彼女は消えてしまい、行為には応じるものの、言葉でのコミュニケーションは中々とれません。それでも少しずつ言葉を交わし、彼女は同時にログインしているほかの訓練生ではなく、AIの一種であるらしいことがわかってきました。そしてその後判明したその正体は…というか、もはや高性能な戦闘シミュレーターただのエロゲーと化しています。なにやってんだ、お前。

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